第15回あさすぱ談義

2013

伊達
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そしてあさすぱ談義も大詰め、2013年の「あかいくらやみ」です。コクーンとのタッグで久々に大きな規模での本公演となりました。
写真は大阪のピロティですが、舞台中央の円形の盆がぐるぐる回ります。
 

 

出演者がとても多い上に豪華ですね。チラシの絵、カッコいいです!
 
伊達
おっ、森くんやっぱそう思った?このチラシね、絵じゃないんだよ。このマスク本当に作って、人がかぶって撮影したんだよ。まあ、俺ね。
かぶっちゃうと前見えないんだけど、手で顎のあたりを触ってね。
 

絵だと思いました!  絵にしか見えません!  これ本物なのか…
しかし毎度のことながら、チラシのビジュアルがカッコいいです。コクーンですし、まるで美術館の企画展のポスターのようです。
 
伊達
日本家屋を借りて、そこにマスクを置いて撮影しました。額は合成です。
 

 

この写真でもまだ絵に見えます。このおぞましいマスクはまだどこかにあるんですか?
 
伊達
どうなんだろ。歴史的な惨殺事件を題材にしてるので、こういうのってお祓いして処分したりとかもあるけど、わからないや。コクーンが保管してるんじゃないかしら。
 

何やら昭和の不気味さというか、不穏な匂いが、凄く漂ってます。
なんかマスク自体が行方不明になって、また新たな事件に入っていきそうな強烈さがありますね。
 
伊達
江戸末期の水戸天狗党の乱を描いてて、福井で投降したのち約350人が斬首、首は塩漬けで水戸に送られ、市中引き回したあと野ざらし、っていう惨事ですからね。
 

稽古前や小屋入り後など、実際にお祓いなどはされたのですか?
 
伊達
通常みたく初日前にお祓いしたと思うよ。
 

何か特別やったわけではなかったのですね。
以前、「東海道四谷怪談」をやらせて頂いた時、本当に四谷へ行ってお祓いと祈祷をしたのですが、とても気が引き締まりました。
いま調べてるのですが、水戸天狗党、本当に壮絶なものだったのですね。
 
伊達
外国の脅威、倒幕、尊皇、複雑な時代だよね。見せしめの要素が強かったんだろうね。
僕も忠臣蔵のとき、泉岳寺にお参りしました。やっぱり史実を扱うのは向き合いかたが変わるよね。
 

明治維新の前後はドラマが異常に多いですね、時代まるごと転倒してるだけあって。
新政府軍の長州藩(山口)と旧幕府軍側の会津藩(福島)は戊辰戦争からずっと仲が悪いとか聞いたことありますし、そういう藩の感覚が残る地方もありそうです!
史実上で大きなドラマがあった場所を当時を想いながら歩いたりするのが大好きなので、歴史ものはたまらないです。実在した人を演じるとなると、かなり取り組み方が変わりますよね。
絵しか残ってない人物と、映像で声や仕草まで残っている人物ではまた違ってくるのかもしれませんが…
 
中山
茨城の中でも色々あると思うよ、
うちの近所の世田谷のあるお寺の境内に第二次世界大戦を忘れないために、燃えて黒焦げのままたっている木がそのままになってるところがあるんだけど‥
 

 

円乗院というところですか?
 
中山
そうそう。あと、こないだ茨城の小美玉に行って泊まった旅館の周りが、郷士の立派な家々が並ぶ街並みで、歩いてたら、天狗党に焼き払われた事を忘れないためにギリ残った黒焦げの柱をわざと門柱に残している家があったもん。
 

 

 

 

 

そうですよね、こうしてどこか一部分でも残しておかないと、記憶は受け継がれないというか、忘れ去られてしまうスピードは早まる一方ですもんね。
これはいつか見に行ってみたいです。村一帯が焼き払われたんですもんね、当時は。
「あかいくらやみ」の中では、どの程度まで扱ったのですか??
 
伊達
山田風太郎の「魔群の通過―天狗党叙事詩」を原案に、第2次大戦後の若者が天狗党の時代に遡って迷い込む物語なので、事件をそのまま描くということではなかったです。
天狗党は敦賀で処分を待つ間、鰊蔵(にしんぐら)に閉じ込められるんだけど、極寒なのに半裸で不衛生にぎゅうぎゅうに押し込まれました。壁には血文字とかあって、その鰊蔵は現在水戸に移築されて公開されてます。
 

いまちょうどWikipediaで藤田小四郎が鰊蔵に監禁されていたところを読んでいました。現存するのですね鰊蔵が。水戸に移築されているというのが凄いですね。
第2次大戦後の若者たちは、天狗党の若者たちに共鳴したのでしょうか?
あぁ、気になります。毎度言ってしまってますが、とても観たいです。
 
伊達
という物語を語る作家と編集者も登場して、彼らも幻想にのみ込まれて別の役目を演じ出すという張り子構造なので、とても面白かったですよ。作家と、天狗党と復讐劇を繰り広げる市川三左衛門を古舘さんが演ってたり。
黒焦げの門は天狗党の悪名高い田中げんぞう(中山さんの役)がやったのかもね。
 

市川三左衛門は天狗党を徹底的に攻めてた人ですよね。
天狗党について詳しい部分を初めて知ったのですが、全体的にかなり滅茶苦茶な事件ですね…恐ろしい。
 
伊達
そうそう。有名な安政の大獄ですら死罪8人、赤穂も47人、352人の死罪がどんだけ異常か、天狗党の乱はまだまだ認知されてないよね。
 

異常すぎてあんまり描かれてないんですかね?  全然知りませんでした天狗党について。
 
木村
天狗党の乱というのは初めて聞きました。
大大大惨事ですね。江戸時代末期、1864年って150年くらい前の話で。150年って、最近私の知り合いの祖父が106歳で亡くなったんですけど!
そう思うとそこまで昔じゃないような、、、
第2次大戦後の若者が天狗党の時代に遡って迷い込む物語、、、とても面白そう!!!
第2次世界大戦も、江戸時代も体験した事のない現代人がその二重構造を演じるというのはとてもパワーが必要なのでは?想像しただけでも刺激が強く、クラっときますね!
とても魅力的!観たいです。
 
中山
ちなみに「あかいくらやみ」は、圭史がイギリスから帰ってきて色々あったけど、
やっぱり間違っていたとしてもブレずにまっすぐに進む男達をかわいく描いた、
圭史の好みはずっと変わらないという感じが素敵な作品でした。
これは、暴走シリーズの仲間の松村武が観に来てくれて、教えてくれた中山にとっては大きな発見でした!
コクーンでやってるのに小劇場の仲間が観に来て、同じだねって言ってもらえるとかなり嬉しいからね〜。蜷川さんも、そこにかなりこだわってたし‥
 
伊達
まっつん面白がってたよねー。蜷川さんもそうなんだね、ついにご一緒できなかったなあ。
 
中山
蜷川さんは商業演劇に行った事を昔の仲間へのリスペクトもあるので、その仲間たちの格好良さと変わらない形でコクーンとかそういう大きな劇場でも成立させたいという思いがあったはず。
戦争の事は、あまり語りたくないという体験者は多いと思うので
水戸でもかつてはアサスパのホームと言われた広島でもあまりそういう話題は出ないと、ぼく中山は思ってます。
でも、演劇が持っている可能性の中で史実を伝えなければならないという事もあるので、
演じる時は本気でやらなければと思ってます。
そして、本気で演じると長塚ノワールの中では、その瞬間だけでもいとおしくなったりすればと、思ってます。
 
伊達
そうだね。蛙昇天や胎内や浮標もみんなそうだね。もちろんアサスパの過去作も。
 
中山
怖い作品ではあったけど
実はその事に、気づいてほっこりした作品でした(^_^*)
 
伊達
赤ん坊がキーマンだったしね。舞台天井部に大きな穴が開いてて、産道=あかいくらやみとも繋がったり。
 
中山
赤ちゃんを産むという事と、作品を産むという事も考えて
自分の子供の命名にも色々思い描いた作品だったけど
俺の命名エピはまた圭史がどこかでエッセイにでもしてくれたら、と思ってます。
 
伊達
さてさて、「あかいくらやみ」終幕後はしばらく公演はお休み。そして2016年、再演希望の最も多かったあの暴走シリーズが帰ってきます。次回あさすぱ談義最終回、どうぞお楽しみに!